1. kw区分ごとの太陽光発電システム価格
太陽光発電システムの価格は、太陽光パネルの設置する枚数が多いほど1kWあたりの価格を下げることができます。これは住宅用の太陽光発電システムでも同じことが言えるのですが、例えば2kWよりも4kWの方が1kWあたりのシステム単価が低くなります。その主な理由は、1システムあたりに掛かる基本料金ともいえる基礎工事や取付設備等の一式費用が掛かる為です。
ちなみに、産業用の固定買取制度が適用される発電容量が10kW以上となっていますので、そのため産業用の方が住宅用に比べて1kWあたりのシステム単価が格段に安くなることが期待できます。
産業用太陽パネルの最新価格相場は、設置する規模によって大きく異なりますが平均しますと「1kWあたり20万円から30万円前半」となっています(2015年4月現在)。住宅用の場合であれば1kWあたり35万円前後となっていますので、産業用はおよそ10万円安くなることになります。
ちなみに、発電容量が1,000kW(1メガワット)を超える大規模な太陽光発電システムのことを「メガソーラー発電所」とよびますが、その場合だと平均して1kWあたり22万円で設置していると言われています。さらに10kW以上50kW未満であれば、平均1kWあたり32万円という住宅用に比べて約3万円安くなっていることが分かります。
産業用太陽光発電設備の平均システム単価 規模別 平均単価(万円/kW)
10-50kW 32
50-500kW 30
500kW-1MW 28
1MW以上 22
2. 50kw以上(高圧連係)では多くの費用がかかる
太陽光発電は規模が大きければ大きい方が、その1kWあたりのシステム価格を下げることが可能であることが分かりました。それでは、産業用太陽光発電の発電容量をメガソーラーのように50kW以上にしていけば良いと思われがちですが、ここで1つ注意点があります。
それは発電容量が1施設あたり50kWを超える場合は、高圧連係という契約を電力会社と締結しなければなりません。その高圧連係に必要な費用と手続きは下記の通りとなっています
50kW以上の高圧連係に必要な費用
1・高圧受電設備(キュービクル)容量100kWあたり、100万円~150万円
2・電気主任技術者の選任、または委託・・・年間50万円~70万円程度の契約保守料
3・各電力会社との高圧発電所の設置協議・・・検討費用として先に21万円支払う
4・各種保安及び運営規定等の届出
キュービクル(高圧受電設備)は発電の規模に応じて出力量を多めに設定する必要があり、そのため費用は100万~150万円程度が掛かる場合があります。ほかにも年間保守や点検を行う電気主任技術者への固定費用や電力会社との接続検討で事前に21万円の費用が発生します。さらに保安規定等の各種届出が必須となっており、高圧だけでなく特別高圧の変電及び蓄電設備を設置する場合においては所轄消防署等への設置届出が必要になります。詳しくは50kw未満・以上(低圧・高圧連係)の電気事業法上の違いをご覧ください。
そこで発電容量を50kW未満に抑えることで、低圧連係で締結できますのでこれらの費用や手続きが不要となります。無理に50kW高圧連係を組むよりも、時間と費用の面で大きなメリットがあることがお分かり頂けたと思います。
3. 高圧連系の抜け道だった低圧分割が、平成26年4月から禁止に
禁止されるに至った経緯としては、設置者間で不公平感があり、また電力会社が代わりに設備費用を負担しなければならないため、社会全体として非効率だと判断されたためです。
例えば、合計で50kW以上で同じ容量を設置する設置者が2人いたとして、一方が高圧連系での申請を行い、もう一方が 2基分の低圧連系で申請をしたとします。そうなると、前者の方は先ほどご紹介した高圧特有に発生する費用を払わなければなりませんが、一方はその費用負担から一切免除されることになります。
つまり、高圧連系申請の設置者は払うべき費用をきちんと支払ったのにも関わらず損をして、低圧連系の設置者は費用負担を電力会社に任せて得をするという形で、これまでが正しくない制度構造になっていたのです。
それでは、具体的にどのような太陽光発電所が低圧分割禁止の対象になったのでしょうか。経済産業省が発表した設備認定における禁止対象は下のようになります。
実質的に同一の申請者から、同時期または近接した時期に複数の同一種類の発電設備の申請があること
当該複数の申請に係る土地が相互に近接するなど、実質的に一つの場所と認められること
ただ、「同時期または近接した時期」「同一種類の発電設備」「実質的に一つの場所と認められる」といった該当条件は、いつ・どのような機器を使い・どれぐらい近い場所に設置したケースに合致するのか具体的には決められていません。
確かに、低圧分割が禁止されたことは初期投資コストを大幅に減らす一つの手法が無くなってしまったことになります。しかし、20年という長期間に1kWあたり「29円+税/kWh」(※4/1~6/30まで)と「27円+税/kWh」(※7/1~)という高額で政府が確実に買い取ってくれる制度は、産業用太陽光発電を始めるうえでの大きな後ろ盾であることに変わりはありません。
以上、kW区分ごとの費用感とその特徴についてお伝えしました。それほど大きな容量を設置しない場合は低圧連系に収まるように調節し、一方で巨額の投資をして高圧連系の太陽光発電所を作る場合には、できるだけ多くの容量を設置してスケールメリットが出るようにすると、より多い売電利益を得ることができます。